「ナショナル・ギャラリー 英国の至宝」 [*映画]
●監督・編集・録音:フレデリック・ワイズマン
●2014年/アメリカ・フランス
2015年4月17日(金)、渋谷・ユーロスペース2にて鑑賞。
Bunkamura ザ・ミュージアムで
『ボッティチェリとルネサンス』展を鑑賞した後に観に行って来ました。
ロンドンの中心地、トラファルガー広場にあり、
年間500万人以上が訪れる世界トップクラスの美術館、ナショナル・ギャラリー。
フレデリック・ワイズマン監督が30年もの間、
いつか撮影したいと切望し続けた場所でもあるそうで。
3ヶ月にわたって全館に潜入、その全てをありのままにカメラに収めたドキュメンタリー映画。
英国が誇る名画の宝庫、世界中から愛される美術館に集うアートのスペシャリストたち。
定期的に見直される美術品の展示位置。
気が遠くなるほど繰り返し調整される照明。
手作業でひとつひとつ丹念に制作される額縁。
高度な修復技術。
個性豊かな専門家たちによるギャラリートーク etc…。
彼らの真摯かつプロフェッショナルな仕事ぶりを多岐にわたって堪能することが出来ます。
一般人がなかなか足を踏み入れることのできない美術館の舞台裏を
クラシック音楽を聴きながら、大スクリーンでじっくり見入る。
こういう楽しみ方もまた贅沢でイイものだ。
なかでも特に、
館内の本物の絵画(ティツィアーノ)の前を舞台に見立てて
英国ロイヤル・バレエ団の二人の男女が踊るシーンは良かったよお〜。
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***《ナショナル・ギャラリーはどんなところ?》***
世界各国の国立美術館の多くは王侯貴族のコレクションが礎となっているが、
ナショナル・ギャラリーは一市民のコレクションから始まった希有な美術館。
1824年、
ロイズ保険組合の発展に寄与した銀行家、
ジョン・ジュリアス・アンガースタイン(1823年没)の
貴重なコレクションが売りに出されると、
イギリスはコレクションを買い取り国立美術館の創立を宣言する。
イギリス初の国立美術館は、一市民の遺した38点のコレクションから誕生したのだ。
***《“名画の宝庫” 充実度を誇るコレクション》***
わずか38点のコレクションからスタートしたナショナル・ギャラリーは、
その後の蒐集を経て、現在では2,300点以上の貴重な作品を所蔵し、
そのほとんどが常設展示されている。
その内容は世界最高のレベルに匹敵。
所蔵作品はイタリア・ルネサンス絵画から、17世紀のフランドル、オランダ絵画、
イギリスやフランス印象派はもちろん近代絵画にも及び、
館内をひとめぐりするだけで西洋美術の歴史を知ることができる。
レンブラントの多くの良作や、
19世紀イギリスを代表する風景画家ターナーが遺した作品を多数所蔵。
1870年に普仏戦争を逃れロンドンにやって来たモネは、
ナショナル・ギャラリーでターナーの作品と出会い、大きな衝撃をうけたという。
そのほか、フランス摂政オルレアン公によるコレクションのうち25点を所蔵、
フランスの画家ドガの死後、その貴重なコレクションのなかから、
自作はもちろんマネやゴーギャンらの歴史に残る傑作群を入手した。
***《誰もが訪れることのできるロンドンの中心地》***
当初はペル・メル街100番地の旧アンガースタイン邸に開設されたが、
1838年に現在のトラファルガー広場に移転。
交通の便もよく、
あらゆる階層の人が容易にアクセスできるロンドンの中心地といえる好立地だ。
空気のきれいなロンドン近郊への移転も検討されたが、
「どんな人でも気軽に来られる場所にあるべき」という方針のもと
現在の場所に落ち着いた。
***《年間500万人以上が訪れる、万人に開かれた美術館》***
ナショナル・ギャラリーの常設展はすべて無料で見ることができる。
その運営は寄付によって成り立っており、館内には募金箱が設置されている。
イギリス国民だけではなく、世界各国から観光客が訪れ、
世界美術館・博物館の動員ランキングでは常にトップクラスにある。
また市民に向けた様々なイベントが企画され、
無料のワークショップやガイドツアーが定期的におこなわれているほか、
5歳未満の子供を対象にしたお話会も催されている。
階級や貧富の差を超え、
すべての市民が来館できる美術館を目指すナショナル・ギャラリーは、
まさに万人に開かれた美術館だ。
(『ナショナル・ギャラリー 英国の至宝』公式サイト内・「ギャラリーの歴史」より抜粋)
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「ボッティチェリとルネサンス フィレンツェの富と美」 [*アート鑑賞]
4月17日(金)は、
Bunkamura ザ・ミュージアムで開催中の
『ボッティチェリとルネサンス フィレンツェの富と美』展に行って来ました。
15世紀、花の都フィレンツェでは、
メディチ家をはじめ銀行家の支援を受け、芸術家が数々の傑作を生み出していきました。
サンドロ・ボッティチェリ(1445〜1510)の美に代表されるフィレンツェのルネサンスは、
フィレンツェ金融業の繁栄が生み出した文化遺産といえます。
本展では、
ヨーロッパの貿易を支配し、ルネサンスの原動力となった金融業の繁栄と、
近代に通じるメセナ活動の誕生を、
フィレンツェと運命をともにしたボッティチェリの作品17点(工房作などを含む)をはじめ、
絵画、彫刻、工芸、資料など約80点によって浮き彫りにします。
(『ボッティチェリとルネサンス』チラシの紹介テキストより抜粋)
【※メセナ:企業が主として資金を提供して文化、芸術活動を支援すること。
ただし、企業による資金以外の経営資源(人材・施設等)による支援も少なからず行われている。
また、企業による事業主催なども含まれる。】
絵画だけでなく、〈美〉を支えた〈富〉にも焦点が当てられている今回の企画展。
中世から初期ルネサンス時代にかけて国際通貨となり、
フィレンツェをヨーロッパ経済の中心に押し上げ、
ひいてはルネサンスの繁栄を生み出した「フィオリーノ金貨」をはじめ、
当時の経済活動をうかがわせる資料や商人の仕事道具も紹介されています。
ルネサンス期の芸術の誕生には、
地中海貿易と金融業によって財を成したフィレンツェ及びメディチ家の資金力が不可欠。
そのメディチ家から絶大な信頼を得ていたボッティチェリは、
彼らの要望を満たす作品を生み出す理想的な画家であり、
女性を清らかに描くことで、「清廉な印象を持たれたい」金融業者の期待に応えたといいます。
イタリア政府の「門外不出リスト」に登録されている、
●サンドロ・ボッティチェリ『聖母子と洗礼者聖ヨハネ』(1477〜1480年頃)は
「トンド」と呼ばれる円形画(5月6日までの期間限定展示)。
とっても色使いが綺麗で、この絵が一番気に入りました。
●マリヌス・ファン・レイメルスヴァーレに基づく模写『両替商と妻』(16世紀半ば)と、
●『高利貸し』(1540年頃)。
ついこないだ、どっかで観たような…と、帰宅後調べてみたら、
『ルーヴル美術館展』(国立新美術館)で観た、
クエンティン・マセイスの『両替商とその妻』(1514年)だった。
『高利貸し』の方は、同じく『ルーヴル美術館展』で観た、
マリヌス・ファン・レイメルスヴァーレに基づく模写による『徴税吏たち』(16世紀)ね。
マリヌス・ファン・レイメルスヴァーレの作品は、
クエンティン・マセイスやアルブレヒト・デューラーの影響を強く受けていて、
3つの題材「両替商(もしくは銀行家)とその妻」「収税人」「書斎の聖ヒエロニムス」を
描いたものがほとんどなのだそう。
やがて、メディチ家の衰退とともにフィレンツェは危機の時代を迎えます。
この頃、修道士ジロラモ・サヴォナローラが台頭。
彼は教会の堕落を批判し、市民に贅沢品や宗教上好ましくない芸術作品を燃やすよう
《虚栄の焼却》への参加を呼びかけ、多くの芸術家がその作品を燃やしました。
が、極端な神権政治の末に民衆の反発を買ってしまったサヴォナローラ。
最終的には火刑に処されます(1498年)。
ここでは、
●フィレンツェの逸名画家による『サヴォナローラの火刑』(17世紀)も展示されていて、
華やかだった歴史の果てを、ただ見ているだけの傍観者になったような気分。
言葉が見つからなかったです。
一方、サヴォナローラの考えにすっかり魅了されたボッティチェリ。
作品は変容し、人物表現は硬くなり、官能性も消えてしまいました。
そして、人気も急落。
最期は貧窮し、負債を抱えたまま死去してしまったようです。
イタリア・ルネサンスと聞くと、美しく理想的な美のイメージが強いけれど、
今回は〈美〉と〈富〉と同時に在った
歴史の〈光〉と〈闇〉の二面性についても考えさせられる…
そんな展覧会でした。
最後は、グッズを(展覧会前売り券とのセットで購入)。
美術ブログ『弐代目・青い日記帳』さん(http://bluediary2.jugem.jp/)発信の企画、
「みんなが欲しいチケットホルダープロジェクト」から生まれたチケットホルダー。
表面には、
ボッティチェリ最盛期の巨大なフレスコ画《受胎告知》(1481年)より
天使ガブリエルの翼と白百合が。
そして、右下にはフィオリーノ金貨もあしらわれています。
ちなみに裏面は、同じく《受胎告知》がノートリミングでレイアウト。
落ち着いた色合いと大人っぽいデザインがイイ感じ。
▼Bunkamura内ロビーラウンジにて、イチゴのクレープ&アイスコーヒー。
館内鑑賞チケット提示で優待割引
▼東急本店のディスプレイ。
Bunkamuraの企画展行く時の楽しみのひとつ。