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アーサー・C・クラーク「2001年宇宙の旅 —決定版—」 [*読書ノート(海外)]


決定版 2001年宇宙の旅 (ハヤカワ文庫SF)

決定版 2001年宇宙の旅 (ハヤカワ文庫SF)

  • 作者: アーサー・C. クラーク
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 1993/02
  • メディア: 文庫

 
夫から借りた。
キューブリック映画版がとてもとても好きだけれど、
まだ小説版を読んでなかったことに(今更ながら)気づき、
やはり一度は読んでおこうと。

小説版もすごく面白かった!
最終目的地映画版木星で、小説版土星〈…の第8衛星ヤペタス〉)、
スター・ゲート内の描写、ラストに行き着くまでの過程などに違いはあれど、
映画版では理解できなかった謎に対する論理的な説明を得られるのは
何と言っても大きい。
そして、映画版ではほとんど触れられていなかったボーマン船長の心理も描かれているので、
より感情移入もし易いしね。

クラークの文章から頭の中で描き出されるイメージは、
キューブリックの映像とはまた違うものだったけれど、
これはこれで、ぐいぐいと響くなあ。
特に第四部「深淵」における、「25 土星一番乗り」から
「26 ハルとの対話」「27 “知る必要”」「28 真空」「29 孤独」「30 秘密」
第五部「土星衛星群」における、「37 実験」「38 前哨」
「39 目のなかへ」「40 退場」のくだりにドキドキだ。

長い、長い旅。
やがては絶望も希望も遠くに捨て去り、
それでも、
好奇心と思考力だけは最後まで(“ある出来事” を迎えるまで)失うことのなかったボーマン
彼が「そこ」から向かった先は、人間の知識にあるどんな世界ともかかわりないところ…。

大胆で抽象的な映画版と、細やかで筋の通った小説版
それぞれ上手いこと棲み分けが出来ているというのかな、
こういうアプローチの仕方もあるんだな、って。
映像は映像で表現してこそ光るものと、
文字は文字で表現してこそ光るものとがあるんだな、って改めて思う。

映画版の方は、セリフも状況説明も少なく、謎だらけ。
(まあ、その結果として、
 物語のミステリアス性は増し、何でもアリの解釈が可能なわけで。
 そして、そこがこの映画のとびっきりな魅力のひとつなわけだけど)
特にラスト直前、ロココ調の真っ白い《部屋》が、
トートツに登場する理由と目的がサッパリわかんなかったんだけど、
アレには「●●」の意味があったのね。

「映画のセットのなかにいるような気がしたのは、文字どおり事実であったわけだ」
(ハヤカワ文庫版 P.312より)

ちなみに、Wikipedia映画版解説によると、
過剰な説明(インタビューやナレーションなど)を削除したのは、
映画からマジックを奪うことを恐れたキューブリックの意向によるもの。
もちろん、小説版の方では、
なぜハルが反乱を起こしたか。そもそもモノリスとは一体なんなのか。
…などの説明もきちんと書かれています。

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