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安部公房「水中都市・デンドロカカリヤ」 [*読書ノート(国内)]


水中都市・デンドロカカリヤ (新潮文庫)

水中都市・デンドロカカリヤ (新潮文庫)

  • 作者: 安部 公房
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 1973/08/01
  • メディア: 文庫

 
初期短編11編を収録。

社会風刺を匂わす要素も織り交ぜつつ、非日常的で非現実的。
どの話もこの上なく不条理だけど、面白い。
これらが全部、昭和24〜27年の間に執筆されたというのもスゴイ。
今読んでも驚かされるのだから、当時はかなりブッ飛んでたろうなー。

『闖入者』は強烈だった。
〈民主主義〉を笠に着て、〈多数決〉という美名にかくれ、
個人の〈生〉を喰い破り、〈恐怖〉で支配する連中。
主人公の身に降りかかる、あまりにも理不尽な展開続きに
ムカつくやら底知れない不気味さを感じるやらで、
実に良い塩梅でイライラ&カッカさせてくれる(笑)。
ああ〜そういえばこの感じ・・・筒井康隆の短編集『懲戒の部屋』を読んだ時を思い出すぞ。
筒井氏の作風には、安部氏からの影響も含まれていたのかな…と想像。

『水中都市』も好き。
泥臭いのに、ファンタジーを感じる。
ラスト二行の
『しかしおれももう返事を待ってはいなかった。おれはその風景を理解することに熱中しはじめているのだった。
この悲しみは、おれだけにしか分らない……。』(P.250)
…がズンときた。

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中野京子「怖い絵 死と乙女篇」 [*読書ノート(国内)]


怖い絵  死と乙女篇 (角川文庫)

怖い絵 死と乙女篇 (角川文庫)

  • 作者: 中野 京子
  • 出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)
  • 発売日: 2012/08/25
  • メディア: 文庫

 
 
『怖い絵 泣く女篇』に続いて、これで2冊目。
私が読んだのは文庫本版。
掲載されている絵も、サイズに合わせた縮小に伴い、細部の線や色が潰れてしまっています。
そのため、解説を読みながら絵をみても、わかりづらい点がちらほらあり、仕方ないとはいえ残念。
もし再読する時は、ハードカバー版で読んだ方がいいな。

名画に秘められた人間心理の深層を鋭く読み解く22の物語。
中でも特に印象的だったのは…

作品1*レーピン『皇女ソフィア』
 女性統治者ソフィア権力争いの末、弟に敗北
 この部屋に閉じ込められ、9年もの幽閉生活を送る。
 窓の外にぼんやり見えるのは、彼女の味方だった銃兵隊長の・・・!
 弟の腹いせによりわざわざ吊るされたそれを、ずっと見せつけられていたとは・・・ひいい。

作品4*ベラスケス『フェリペ・プロスペロ王子』
 一見、可愛らしい子どもの肖像画と思いきや…。
 ともに描かれたディテールとそれらについての解説から、
 この絵の正体は、大人たちの一方的な都合の犠牲となってしまった、
 王子の哀しい受難の姿であるのだとわかってくる。

作品8*セガンティーニ『悪しき母たち』
 一目みただけで「怖い」と感じる絵。
 母の死が契機となり、孤独を強いられたセガンティーニ
 自分を捨てた父より、早くに亡くなった母が恨めしい。
 と同時に、母の死に責任を感じ、
 命と引き換えに自分を産み育ててくれた母を次第に理想化していった。
 この絵は「堕胎」を絵画化した初めての作品といわれているそうで、
 母性を讃えるため、母性を持たない女たちを酷(むご)く罰する絵を描くのは、
 セガンティーニの屈折した思いゆえ。

作品11*アンソール『仮面にかこまれた自画像』
 群れる仮面がことさらにグロテスクなため、
 素顔の画家の整った自画像はいっそう孤高で高貴とあれば、
 それは自己陶酔以外の何ものでもない。
 …が、この絵に描かれた男、実はアンソール本人ではない
 アンソールもまた仮面をかぶっているのだ、ただし防御の鎧としての仮面を。
「画家の王」と呼ばれた、かの男の仮面を!

作品18*アミゴーニ『ファリネッリと友人たち』
 穏やかな幸福感の漂う絵。成功者たちの憩いの園のよう。
 中央に座る主役のファリネッリは、オペラ界に君臨した稀代のスーパースター
 そしてカストラートである。
「神と人と音楽を結びつける聖なるもの」とされるカストラートとは、一体何なのか?
 また、それがどういう理由からうまれたものなのか?
 そして、華やかなカストラートたちの影につきまとう実情とは?
 解説を読んでゾッとした。
 意味がわかると、これもまた「怖い絵」だった。

作品22*シーレ『死と乙女』
 画家自らを死神になぞらえたこの絵にまつわるエピソード。
 怖いというより、哀しい。

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小川未明「小川未明童話集」 [*読書ノート(国内)]


小川未明童話集 (新潮文庫)

小川未明童話集 (新潮文庫)

  • 作者: 小川 未明
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 1961/11/13
  • メディア: 文庫


小川未明童話は、大人になってから知りました。
酒井駒子さんのイラストによる絵本がとても印象的で、
以来、未明氏の原作も読もう!読みたい!と思ってて。

「日本のアンデルセン」とも呼ばれ、児童文学の近代化、地位の向上に貢献した作家で、
代表作は『赤いろうそくと人魚』など。
今回読んだ本は25編の童話から構成されていて、始まりは、やはり『赤いろうそくと人魚』から。

子供向けのお話でありながら、
人間のエゴとか社会の残酷さなど、物事の隠れた面をしっかりグリグリとえぐってる
絵本から知った作家だけど、文字だけでも、こう…迫ってくるものがあった。

特に強く頭に残ったのは、
『赤いろうそくと人魚』はもちろんとして、『月とあざらし』も泣ける。
他には、『飴チョコの天使』『百姓の夢』『負傷した線路と月』
『殿さまの茶わん』『黒い人と赤いそり』も。

ところで、
『百姓の夢』の「百姓」は、もっときつ〜くとっちめてやればイイのに…と思ってしまった私;
おとなしいけど、人の感情がわかる、やさしい牛に対してあの仕打ちかよ…ってね。
あまりにも可哀想じゃないか。

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皆川博子「悦楽園」 [*読書ノート(国内)]


悦楽園 (ふしぎ文学館)

悦楽園 (ふしぎ文学館)

  • 作者: 皆川 博子
  • 出版社/メーカー: 出版芸術社
  • 発売日: 1994/09
  • メディア: 単行本


『異色の恐怖犯罪小説(クライムノヴェル)傑作集!
美に憑かれた芸術家、無軌道な若者、憎みあう母娘…
狂った人々が織り成す、愛と相剋の犯罪図絵!』
【出版芸術社 ふしぎ文学館『悦楽園』単行本オビのコピーより】

おいおいおいおいおいおい・・・!!
全10編中、『獣舎のスキャット』がダントツで突き抜けちゃっていらっしゃいます。
あまりの破壊力に背筋がビリッときた(でも好き)。

『聖夜』伯母も凄いけど。
キャラが立ち過ぎちゃって。アレ過ぎちゃって。
ムカつくの通り越して終いには笑ってしまった。

登場人物たちがどういう結末を辿ったのかは、
全て〈あくまで〉読者の想像に任されてる

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中野京子「怖い絵 泣く女篇」 [*読書ノート(国内)]


怖い絵 泣く女篇 (角川文庫)

怖い絵 泣く女篇 (角川文庫)

  • 作者: 中野 京子
  • 出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)
  • 発売日: 2011/07/23
  • メディア: 文庫


名画に秘められた人間心理の深淵を読み解く22の物語。

タイトルだけは知ってて、前から何かと気になってた本。
中野京子さんの本を読むのは今回が初めてで、書店でパラパラめくってみたら、
好きな絵がいくつか(エッシャー『相対性』ビアズリー『サロメ』ベックリン『死の島』
載ってて嬉しかったので、買って読んでみようかと。

それぞれの絵画の見方隠喩の解釈など、文章わかりやすくて面白かった。
中でも特に印象に残った(怖かった)のは、

カレーニョ・デ・ミランダ『カルロス二世』
ベラスケス『ラス・メニーナス』
ホガース『精神病院にて』

これらの絵が語る状況と意味その時代の空気、そして何より人間の怖さにゾッとした…。

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「須賀敦子全集 第1巻」 [*読書ノート(国内)]


須賀敦子全集 第1巻 (河出文庫)

須賀敦子全集 第1巻 (河出文庫)

  • 作者: 須賀 敦子
  • 出版社/メーカー: 河出書房新社
  • 発売日: 2006/10/05
  • メディア: 文庫


須賀敦子さんの著書を読むのはこれが初めて。
日本語の文章が美しい作家として、彼女の名があがるのをあちこちで見かけてたので、
前々から読んでみたいなと思ってました。

収録作品は、
デビュー作でもある『ミラノ 霧の風景』
60年代ミラノの小さな共同体に集う人々の、希望と熱情の物語『コルシア書店の仲間たち』
さまざまな出会いを綴った、連作エッセイ12篇『旅のあいまに』

イタリアで出会った人々との出会いや別れ。様々な体験。
そこにあるのは、異国で暮らす喜びや興奮ばかりではないんだね。
長い年月を経て変わりゆく友人たち。老いや死を通じて思い知らされる時の流れの残酷さ…。
どのエピソードも深みがあって、
こういうのってやっぱり、完全にその国の社会の一員として暮らした人でないと書けないよなあ。

淡々とした文体で綴られているようでいて、
揺るぎない何か軸のようなものを感じさせてくれる筆致が素晴らしいなと思いました。

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伊藤計劃「虐殺器官」【2】 [*読書ノート(国内)]

虐殺器官 (ハヤカワ文庫JA)

虐殺器官 (ハヤカワ文庫JA)

  • 作者: 伊藤 計劃
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2010/02/10
  • メディア: 文庫

フィクションながらも〈文法〉〈テクノロジー〉の在りように戦慄。

これを読み始めたばかりの時に書いた記事でも触れたけど、
『2001年宇宙の旅』
『頭文字D』(←直接的な表記はないけど、ファンならすぐわかるアレが登場)
『ジャクソン・ポロック』
…と、ワテクシ的にビビッとくるワードが序盤から散りばめられてるもんだから、
趣味趣向がかなり似てるかも!と作者氏に勝手ながら親近感

そんなとっかかりのおかげもあって、最後までぐいぐいと読めちゃいました。

中盤以降も、
『J・G・バラード』
『リドリー・スコット』
『リゲティ』(現代音楽作曲家。前述の「2001年宇宙の旅」でも彼の曲が使われている)
『テリー・ギリアム』
…などなど、
これらのワードに何かしら響くものをお持ちの方は思わずニヤリとしちゃいそうですね。

近未来SF軍事ものなので特殊な用語が多用されているものの、
文章自体は読みやすく頭の中にスラスラ入ってくる感じ。
また、文庫版の最後に収録されている解説
および伊坂幸太郎氏小島秀夫氏のコメントにもあるように、
「語り口の繊細さ」もこの小説の魅力のひとつだと思います。
ただならない殺伐としたタイトルに違わず、
主人公のクラヴィス・シェパード大尉はじめ登場人物たちも
圧倒的な現実の中でエライことになっちゃってるんだけど、
細やかで淡々とした一人称の語り口で終始貫かれている。
このズレ感がフックとして良い意味で利いていて、倍面白いと感じました。

ネタバレしたくないからあんまり書けないけど、ラストの感想は「マジかよ・・・」でした。

2015年の劇場アニメ化、どんな作品に仕上がるのか楽しみ。

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伊藤計劃「虐殺器官」【1】 [*読書ノート(国内)]

虐殺器官.jpg

あちこちで高評価、そして哀しく切ないお話…と聞いて興味をもち、先月買っておいた本。
積ん読本消化中というのもあって、これを読むのはもうちょっと後でもイイかと思ってたけど、
「2015年劇場アニメ化」(ちなみにノイタミナ名義)と聞き、
ちょうど読んでた本読了したとこでもあったので、急遽順番変更!
一昨日から読み始めました。

今、読んでるのは第二部に入った辺りなんだけど、序盤だけで既に
『2001年宇宙の旅』
『頭文字D(←直接的な表記はないけど、ファンならすぐわかるアレが登場)
『ジャクソン・ポロック』
…とワテクシ的にビビッとくるワードが散りばめられてるもんだから、
《もしかしてこの人と私の趣味趣向、かなり似てる?》と勝手に親近感わきまくってます(笑)。


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皆川博子「花闇」 [*読書ノート(国内)]

花闇 (集英社文庫)

花闇 (集英社文庫)

  • 作者: 皆川 博子
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2002/12/13
  • メディア: 文庫

全てを読み終えてから、序章に戻ってもう一度読み返すと結構・・・きます。

『自分は、七分がた、死んでいるようなもの』『そうしないと、辛くて苦しくてかなわないから』と、ちょっと横に退いて何もかもがよそごとのように冷めた目線をもって生きてきた三すじ
そんな彼の心をも絡めとって離さず、ゆるぎなく美しい、唯一無二の存在であり続けた田之助光と影、そして壮絶な生涯がここに綴られています。

金で汚され色で汚され、その汚濁を養いに、こうも清冽(せいれつ)な花が咲く。その仕組が、三すじには不思議であった。(P.120)

また、三すじにとって、ある一つの感覚を共有できる同志、心から打ち解けて話せるたった一人の相手として〈最後の浮世絵師〉月岡芳年も登場。
「英名二十八衆句」「魁題百撰相」を絡めたエピソードも作中に盛り込まれているので、芳年好きな人は一度読んでみるのもまた一興かもですよ。

***************************

幕末から明治の初めにかけて一世を風靡した歌舞伎役者がいた。

三代目・澤村田之助。
名門に生まれ、美貌と才能に恵まれた女形として絶大な人気を博しながら、不治の病に冒されて三十四歳の若さで逝った。
進行する病魔と闘い、足を失いながらも舞台にたつその気迫。

芸に憑かれた人気役者の短くも数奇な生涯を、同門の大部屋役者(市川三すじ)の目を通して情緒豊かにつづる長編小説。

【集英社文庫『花闇』裏表紙の紹介文より抜粋】

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沙藤一樹「D-ブリッジ・テープ」 [*読書ノート(国内)]

【※この日記は別サイトで2009年1月27日にアップしたものを転記しています】

 

D‐ブリッジ・テープ (角川ホラー文庫)

D‐ブリッジ・テープ (角川ホラー文庫)

  • 作者: 沙藤 一樹
  • 出版社/メーカー: 角川書店
  • 発売日: 1998/12
  • メディア: 文庫

 

1月17日から読み始め、1月19日読了。

図書館から借りてきたもの。

 

近未来、不法投棄されたゴミが溢れ返る横浜ベイブリッジで少年の死体と1本のカセットテープが発見される。

今、ブリッジの再開発計画に予算を落とそうと、会議室に集まる人々の前でそのテープが再生され始めた。

耳障りな雑音に続いて、犬に似た息遣いと少年の声。テープの中には、ゴミ同然に捨てられ、ゴミの中で生き続けるしかなかった少年の凄まじい「生」の独白が…。

 

少年が救いのない絶望だらけの生き様を振り絞るように語り続けるのに対し、そのテープを聞く会議室の大人達の反応は空々しく何処までも冷淡。中には居眠りし始める奴さえいる。

 

カテゴリ的にはホラー小説だけど、読み終えた後は、怖いと言うよりじわじわ悲しくなってくる作品でした(でも、巻末の高橋克彦氏の賞賛ぶりはちょっと大げさ…かな?)。

 

ボリュームは160ページ前後で、行間が広く、パッと見、余白も多いので、読むスピードが早い人は1時間もしないうちに読み終えられるんじゃないかな?

 

ちなみに、グロテスク(またソレか!)な描写NGな人にはオススメ出来ないです。あと、動物好きな人や虫がキライな人も絶っっっ対に止めといた方が。

 

いや…うーん、私もグロ系はむしろ苦手な方なんだけど…。

最近手に取る本は、読み進むうちにそういう描写にぶち当たる確率がどうも高いような(ホラーもの多かったしね)^^;

 

でも、去年の夏頃から「吐きたいほど愛してる」とか「天使の囀り」「ひとめあなたに…」「玩具修理者」などを立て続けに読んできたせいか、かなりグロ耐性はついてきたような気がする。

そんな実生活に役立ちそうにないもんばっか鍛えてどーする!って感じだけど(笑)、このまま頑張り続けたら(?)いつか友成純一も読める日が来るかもしれない!???


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