「処女の泉」/「野いちご」 [*映画]
4月6日(月)、早稲田松竹で
《早稲田松竹クラシックス vol.99 イングマール・ベルイマン監督特集》というテーマで、
『処女の泉』と『野いちご』の2本立てを観て来ました。
前記事で書いた美術展(庭美『幻想絶佳:アール・デコと古典主義』)の後に行ったんだけど、
時間が押したため、映画館に着いたのがホント上映開始時間ギリギリで…。
間に合って良かった(^^;
古い映画も、名作と謳われているものは可能な限り観ておきたい。
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『処女の泉』
●監督:イングマール・ベルイマン
●1960年/スウェーデン/モノクロ
可憐な少女に起こった悲劇と、残された父親の痛烈な復讐を描いた一作。
黒澤明を敬愛するベルイマンが『羅生門』に深い感銘を受け、
その強い影響のもとに誕生した映画としても知られているそうです。
白と黒で彩られた明暗のバランスが絶妙。
序盤の空と雲の美しさや馬に乗る少女のシルエット…ハッとさせられました。
16世紀のスウェーデン。豪農テーレの屋敷。
妊娠中の召使いインゲリは、朝の支度の手を止め、異教の神オーディンに祈りを捧げていた。
家の中ではテーレと、敬虔なキリスト教徒の妻が朝の祈りを捧げている。
寝坊して朝食に遅れた一人娘のカーリンは、
父親のいいつけで教会に寄進するロウソクを届けに行くことに。
母親の心配をよそに、一張羅の晴れ着をまとって上機嫌のカーリン。
美しく世間知らずの彼女を妬むインゲリは、
お弁当のサンドイッチにヒキガエルを挟み、ささやかな復讐を試みるのだが…。
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『野いちご』
●監督・脚本:イングマール・ベルイマン
●1957年/スウェーデン/モノクロ
タルコフスキーが、オールタイム・ベストとして挙げたうちの一作。
〈野いちご〉とは、青春時代に主人公が味わった失恋の思い出の象徴。
生と死、そして家族をテーマに、
夢や追想を織り交ぜつつ、ストーリーは進んでいきます。
妻を亡くし、子供は独立、
そして今は家政婦と二人きりの日々を送る78歳の医師イーサク・ボルイ。
長年医学に身を捧げてきた功績が認められて表彰されることになるが、
表彰式に向かう車旅の道程で生家の近くに咲く野いちごを見たことを発端として、
青年期の記憶がありありと甦る。
いつしかイーサクは現実の旅の光景と、過去の幻影に満ちた夢の世界を彷徨うようになり…。
ラストの光景が素晴らしい。
救いとか希望とか、いろんな明るいものが目の前でパーッと開けた感じ。
観てる私にも「もう大丈夫だよ」って優しく声をかけられたような気がした。
あと、道中で出会う、三人の若者もなんかイイな。
ちょっとおバカなんだけど、気の良い子たちばかりだった。
「幻想絶佳:アール・デコと古典主義」 [*アート鑑賞]
4月6日(月)は、
東京都庭園美術館で開催中の
「東京都庭園美術館開館30周年記念展
幻想絶佳:アール・デコと古典主義」に行って来ました。
終了間際、滑り込みセーフ!
アール・ヌーヴォーに人々が退屈し、
ドイツやオーストリアから新しいデザインの潮流が押し寄せてきた1910年前後、
フランスの装飾美術界では自らの伝統に立ち返った「新様式」を模索する動きが生まれました。
その下敷きとなったのは、
彫刻家ブールデルや画家のモーリス・ドニ、アンドレ・ドラン、
そしてピカソらも新しい可能性を見いだした古典主義でした。
第一次世界大戦によって約10年も実施が遅れたアール・デコ博覧会は、1925年にようやく開かれ、
アンリ・ラパンら装飾美術家協会による《フランス大使館》と
リュールマンの《コレクター館》では、
モダンに洗練された古典主義のアール・デコ様式として成熟した姿を現します。
1933年に建てられた朝香宮邸でも、内装デザインを担当したアンリ・ラパンは
静謐さと祝祭性、優雅さと安らぎの両面を表現するためにこのスタイルを選択しました。
本展はアール・デコにおける朝香宮邸の位置づけを明らかにしながら、
古典主義のアール・デコ作家たちの豊かなイマジネーションから生まれた世界—幻想絶佳—を、
フランスの美術館所蔵品を中心とした33作家による
家具、磁器、銀器、ガラス、ドレス、絵画、彫刻など、80余点の作品から紹介します。
(『幻想絶佳:アール・デコと古典主義』チラシの紹介テキストより抜粋)
朝香宮邸は、
フランスを発祥とするアール・デコの遺産のなかでもたいへん優れた作例。
今回の展示では、その空間を活かし、
アンサンブル展示の要素も取り入れながら
当時のサロンや博覧会で行われた生活空間、美意識を再現するよう
美術作品を配置しているとのこと。
また、新館のギャラリーでは、
両大戦期間に活躍したパリ国立美術学校(アカデミー)出身者を中心とした
画家・彫刻家たちの作品が紹介されています。
この後、早稲田松竹で映画を観る予定で、
上映時間に遅れないよう、やや駆け足な鑑賞になっちゃったけど、
そんな中で特に惹かれた絵画は…
●ジャン・デュパ『パリスの審判』(1923年/油彩画)
それと、新館ギャラリーで展示されていた、
●マックス・アングラン『四季』(1930〜1945年頃/大きな油彩画)
●ロベール・プゲオン『イタリアの幻想』(1928年/油彩画)
…も素晴らしかった。
家具&調度品の展示も素敵。
アール・デコを代表する鉄工芸家レイモン・シュブによる、
アンリ・ラパンをオマージュしたアンサンブル、●『ラパンの食卓』。
古代と南国のエキゾティシズムを融合させたジャン・デュパの絵画『射手』
(1931年/インク、パステル、水彩)からのインスピレーションによる
妃殿下のティー・タイムのセッティング、●『デュパのティー・タイム』。
2階にある書庫の窓から見える桜、綺麗だった!
新館のカフェ、満席で入れなかったのは残念!
▼館内で唯一撮影OKだった『デュパのティー・タイム』