イーヴリン・ウォー「ブライヅヘッドふたたび」 [*読書ノート(海外)]
このちくま文庫版は、Amazonで購入した中古本。
ヤケ&傷みアリだけど、ほぼ定価に近い値段で入手出来てラッキーだった。
1924年、オックスフォード大学。
勉強熱心で真面目なチャールスは美しくて奔放な青年貴族セバスチアンと出会い、
その魅力にひきつけられていった。
二人の間にはすぐに友情が生まれ、
チャールスはセバスチアンの家族が住むブライヅヘッドの城を訪ね、
その華やかな世界の魔力にとらわれてゆく。
一方、セバスチアンは酒浸りの生活となり、やがて倒錯した愛に溺れはじめる。
イギリス貴族一家が崩壊していくさまを、一人の男の視点から抒情豊かに描いた名作。
【ちくま文庫『ブライヅヘッドふたたび』裏表紙の紹介文より抜粋】
この小説の一番の魅力は、
チャールスとセバスチアンの “精神的” 愛による繋がり・・・もあるけど、
(親密だけど、ホモセクシャルとは別の、特別な関係だと思う)
なんといっても夏のイングランドの描写かな。
アルカディア。
アロイシアス。
楡の木立の下で昇り行く煙草の煙。
果樹園で探し廻った冷い苺や温い無花果。
温室から温室へ。
一つの匂いから又別な匂いへ。
読むと、行きたくて行きたくてたまらなくなるんだよね。
死ぬまでに一度は行ってみたいところ(ヨークシャーのCastle Howard)がもうひとつ増えた。
これは、
取り返しのつかない時間を惜しむ気持ちを掻き起こさずにはいられない、
甘美で哀切な青春の回想。
・・・と同時に、「宗教」という呪縛?に振り回され続けた人々の物語でもある。
(個人的には、ジュリアにはあまり共感することができず)
残りページあと僅かに差し掛かった辺りでなんだか…読み終えるのが名残り惜しい気分に。
あ!それと、チャールスのパパのキャラや言動が強烈な異彩を放ってて、
ひどく喰えない爺さんっぷりが面白かったんだけど、
現実にあんな変人の父親がいたら嫌過ぎる(笑)。
作中、チャールス・パパがそういう性格になってしまった原因についても少し触れられていて、
そのくだりを読むと何ともいえない気持ちになってしまうんだけどね。
この小説は、吉田健一氏の訳も良い。
今回初めて氏のお名前を知ったのだけど、吉田茂元首相の息子さんなのだとか。
独特でクセのある文体に最初は戸惑ったものの、
自分なりにリズムが掴めてくると、ぐいぐい読めちゃう。
で、この小説を英国でTVドラマ化した『ブライズヘッドふたたび』(全11話)も、
原作読みと併行しつつ2014年10月からイマジカBSで視聴してました。
原作に忠実で丁寧な作りに加えて、美しい映像も魅力的。
こちらも最終回を迎える時、寂しくなってしまった。
楽しみがひとつ減り、やはり心にポッカリ穴があいた気分に…。
若かりし頃のジェレミー・アイアンズ&アンソニー・アンドリュースも、
それはそれは素敵でしたよ。