サキ「サキ短篇集」 [*読書ノート(海外)]
【※この日記は別サイトで2009年3月17日にアップしたものを転記しています】
(↑※私が所持している文庫本〈第49刷〉では、サキ本人の肖像がカバーに用いられています)
昨年12月22日から読み始め、2月18日読了。
計21篇からなる短篇集で、本自体もそれほど分厚いわけではないのだけど、他の本と並行しつつチマチマ読んでたので、読み終えるのにやたら時間がかかってしまった。
この作品、確か学生時代に読んだはずなんだけどなあ…。内容はすっかり忘れてしまっていて、10ウン年ぶりの再読です。何をきっかけにこの作品を読もうと思ったのかはさっぱり記憶にないけど、私のことだからきっと当時好きだった誰かに感化されたんだろう(笑)。
ちなみに私は数ヶ月前に読んだ本ですら、内容の記憶がどんどんあやふやになってしまいます。
世の読書好きな方々は一度読んだ本は後々まで鮮明に憶えていらっしゃるものなのでしょうか…?
さすがに記憶力の悪い私でも、面白過ぎて相当にのめり込んだ本、部分的でも鮮烈に印象的だったシーンや感動したシーンなどはある程度記憶に残っているんだけども…。時々ふと「自分の脳ミソはザルなのでは???」と心配になることがあります^^;
「サキ短篇集」、数ページで完結する短い話ばかりですが、どれもなかなかブラックな展開に満ち溢れていて面白かったです。
中でも特に気に入った作品は、『平和的玩具』『肥った牝牛』『話上手』『開いた窓』『宵闇』『家庭』『おせっかい』『盲点』。
ユーモアたっぷりのクスッと笑わせてくれる作品もありますが、登場人物の人生を左右するような笑えないオチ、救いがなく後味悪いオチも結構多いです。
でも、どの作品も謎を残したような曖昧な終わり方をするものが一切ないので、読後感は不思議とキリッした印象を受けました。
…10ウン年後、また「忘れた〜」とか言って読み返してたりしたら笑えるかも。
ジョルジュ・バタイユ「マダム・エドワルダ」 [*読書ノート(海外)]
【※この日記は別サイトで2009年2月17日にアップしたものを転記しています】
マダム・エドワルダ―バタイユ作品集 (角川文庫クラシックス)
- 作者: G.バタイユ
- 出版社/メーカー: 角川書店
- 発売日: 1976/02
- メディア: 文庫
1月26日から読み始め、2月11日読了。
図書館から借りてきたもの。
バタイユを知った元々のきっかけは、10〜20代の頃、大好きでよく読んでいた丸尾末広の漫画からです。
昔、ペヨトル工房という出版社(「夜想」とか出してるところ)から「銀星倶楽部」という漫画誌が出ていて、そこで掲載されていた丸尾先生のインタビューを読んだことから「ジョルジュ・バタイユ」という名前を初めて知りました。
まあ、当の丸尾先生いわく「バタイユを漫画の中に持って来たのは、別に作品から影響受けたわけでもなんでもなく、単に『眼球譚』ってタイトルが気に入っただけ」、「バタイユの深刻なエロティシズム哲学を根こそぎ表層化して暴力として出したかっただけ」…とのことですが。
…てな感じで、丸尾先生自身は、思想家/作家としてのバタイユについてはさほど問題にしてなかったみたいなんだけど、元ネタとしてどんな内容なのかはずっと気になってたので、図書館で文庫本見つけたのを機会に借りてみました。
(バタイユといえば、昔、マダム・エドワルダっていうポジティブパンク系のバンドがあったなあ。(曲は聴いたことないんだけど)メンバーの中にバタイユ好きな人がいたのかな?)
今回読んだのは角川文庫版の方で、収録作品は、
『マダム・エドワルダ』《筆名:ピエール・アンジェリック》
『死者』
『眼球譚』《筆名:ロード・オーシュ(便所神)》
『エロティシズムに関する逆説(論文)』
『エロティシズムと死の魅惑 —講演・討論会記録—』
ウフフ…論文の方は…正直言ってちんぷんかんぷん、講演内容も自分の脳みそには超難解、後述の討論会で多少は補足説明されてるものの、わかった「つもり」レベルにすらなれませんでした… 先に「バタイユ入門」読んどいた方が良かったかな(^^;
小説3編の方は、過激で狂気じみた内容に引っ張り込まれたというのもあって、かなり興味深く読みました。露骨なエロではあるんだけど、無軌道っぷりの方が勝っている感じでなかなか良いです。
『マダム・エドワルダ』『死者』も良かったけど、3編の中では『眼球譚』が一番面白いなと思いました。
『マダム・エドワルダ』は短編ながらも、悲痛さ、陰鬱さ、狂気、滑稽さ、他にもいろんなものがゴッタ煮状態で突っ走ってて、最後になって「アレ?もう読み終わっちゃった?」という感じで、まさに面食らいっぱなしの不思議な余韻が残る作品でした。
『眼球譚』は、『マダム〜』とはまた違い、ギラギラした強烈さを感じる作品。
第一部の「物語」と第二部の「暗合」で構成されてるんだけど、第一部の後半部分に当たるスペインの灼熱の空の下で起こった出来事の印象が最も強いせいで、余計にギラギラしたイメージが定着してるのかも。
また、この話、とにかく「球体(眼球、玉子、●●)」がよく登場します。
第一部を読んだだけだとこれらの繋がりが突飛過ぎて「なぜ球体???」って感じなんだけど、第二部の「暗合」を読むと、バタイユの数々の実体験や記憶のイメージなどの諸事物が実は密接に繋がり合ってることがわかってきます。
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ココから先は完全に余談&自分語りですが、私は好きな人物&作品には非常〜に感化されやすいミーハーです。
なので、その作品の元ネタとか好きなバンドや作家のルーツ&オマージュの対象を知ると、気になってつい音楽やら本やら映画やらを追っかけたくなってしまいます。
当時、丸尾先生から影響受けて興味を持ったものも多く、思えば、夢野久作、ジョイ・ディヴィジョン、「カリガリ博士」「ノスフェラトゥ」などの古典白黒映画、東京グランギニョル(解散後に知ったので、リアルタイムで公演を観れなかったことがいまだに悔しい!)、片山健(初期の画集を一度でいいから生で見たい…)etc. を知ったのもぜ〜んぶ丸尾末広の影響!
どれもこれも初めて聞く名前ばかりだったけど、アングラな世界にちょっとばかし触れられた気がしてすごくワクワクしてました。
丸尾先生の作品、最近のは全然読んでないので、また本屋に探しに行こうかな。
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…って、また長くなっちゃった。
独り善がりな文章ですが、もし最後まで読んでくれる人がいたら感謝しますm(_ _)m
ハロルド・ネベンザール「カフェ・ベルリン」 [*読書ノート(海外)]
【※この日記は別サイトで2009年1月21日にアップしたものを転記しています】
昨年12月25日から読み始め、1月17日読了。
著者や内容に対する前知識は全くなしで、たまたま図書館で目に止まった本。
カバーイラストに何となく惹かれたのと、あらすじ文に目を通して、ちょっと興味を引かれたので借りてみた。
第二次世界大戦中、ドイツがナチス政権下にあった頃、ユダヤ人でありながら自分の素性を隠し続け(スペイン人に成り済ましていた)、ベルリン有数のナイトクラブ・オーナーとしておさまったダニエル・サポルタ。
彼によって綴られた、1943年11月14日から1945年4月30日(ヒトラーが自殺した日)までの日記を元にして構成されたノンフィクション小説。
ふとしたきっかけと出会いからベルリンで店を買い取ることになり、あれよあれよという間にSSの高級将校達が集まる有名クラブとして繁盛するまでに至った。
成功物語に彩られた過去の回想、そして、ユダヤ人であることがばれてしまったために空襲下の屋根裏部屋に身を隠し、いつ発見されるかという極限状態の中で恐怖に怯えつつ日記を書き綴る現在の様子とを織り交ぜながら話は進んでいく。
恥ずかしながら、歴史的背景や社会情勢に対する元々の理解力や知識がとんでもなく乏しいため、当時の社会状況や歴史的/宗教的思想を語る部分については読み進めるのにかなり時間がかかってしまった(しかも全て理解出来てないと思う…)。
でも、クラブに集う踊り子達との性のこと、迫害されていた両性具有者を救い出したつもりが最終的には搾取するがのごとく利用し続けてしまったこと、秘密のスパイ行動への加担、自分の身を守るためとはいえ人を殺めてしまったこと、そして何よりも唯一愛した女性を傷つけ精神を破壊してしまったことへの後悔…など、夜の海の中を自由に泳ぎ、きらびやかな生活を送りながらも少しずつ堕ちていく主人公の心の葛藤部分にとても引き込まれた。
あと、注目のしどころがちょっとズレてるかもしれないけど、本編を読んでいて印象的だったのが、様々な料理や食材、食事についての描写。どのシーンも、それはそれはたまらなく美味しそうに書かれていてねぇ…。
主人公もそのことについて触れていたけど、やはり食事の時間(たとえジャガイモ1個のみであろうと)だけが、屋根裏部屋で過ごす暗く寂しい日々に唯一色合いを添えてくれる非常に重要なものだったから、日記の中にもかつての豊かな食生活に対する恋しさが自然と現れていたのかもしれない。
J・G・バラード「結晶世界」 [*読書ノート(海外)]
【※この日記は別サイトで2008年11月14日にアップしたものを転記しています】
創元文庫から出ている海外SF小説。
もともと読解力が乏しいということもあって、正直、海外小説は難解そうなイメージがまだまだ強かったりする。でもここ最近は読書の神様?が降りて来てるのか、とにかくいろんな本を読んでみたい!という欲求の方が強いので、掲示板や書評などを見て「これは面白そう」と思ったら、とにかく買う or 図書館で探して借りて来ちゃいます。
で、J・G・バラードの「結晶世界」。
10月26日に読み始め、11月5日読了。
この作品を読む前は、「森の結晶化というクライマックスをいかにお耽美にドラマチックに描き上げているのかしら」なーんて一人で勝手にアホっぽい期待をしてたんだけども(^^;
少なくともお耽美とか陶酔とかそういう世界ではなかったよな…。
自分の身の回りのあらゆるものだけでなく、人間も結晶化してしまうという非常に恐ろしいお話で。
でも、結晶世界は美しい。
異常だけど美しい、怖いけど美しい。
結晶化の様子はこれでもか!ていう位、何度も細かく描かれている。
(読み終えた後に振り返ってみると、物語の約半分は結晶化の情景描写に費やされてたんじゃないかって位で…)
特に物語内で一番の中心舞台となる森の中は、とてつもなく魅惑的で美しい世界に感じられる。
しかも登場人物はみんなどこかトチ狂ってて、彼らがそれぞれ破滅(と思わない人もいるかも)に向かっていく様も見放せない。
そもそも主人公からして、忘れ得ぬ人妻を追っかけてきたのをきっかけにこの森に入ることになっちゃったわけで。
サンダーズ(主人公)は、結局あの結晶世界に魅入られちゃったんだね。あの後一体どうなったんだろう…。
どっちにしてもあのままいくといずれ世界は結晶化されて肉体とか時間とかそんなものは永遠にどうでもよくなってしまうんだろうから(怖っ)、全ての人間は遅かれ早かれ…ってことなのかな。
ちなみにもうひとつの感想として、実をいうと途中までは…正直、読み進めるのが退屈でした(^^;
全体的に淡々と話が進むので、仕事帰りの電車の中で座って読むとついウトウトしたり…(笑)。
でも、読み終えた後に「アレは伏線だったのかあ!」と気づいたこともあったし、こういう小説って1回目より2回目に読む方が面白いのかも。
ガストン・ルルー「ガストン・ルルーの恐怖夜話」 [*読書ノート(海外)]
【※この日記は別サイトで2008年9月29日・10月17日にアップしたものを転記しています】
ガストン・ルルーの恐怖夜話 (創元推理文庫 (530‐1))
- 作者: ガストン・ルルー
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 1983/01
- メディア: 文庫
9月28日から読み始め、10月17日読了。
時間かかってしまったけどやっと読み終えた。
やっぱり途中で仕事期間に入ると、ただでさえ遅い読書スピードがガクッと落ちるなぁ…。
仕事のある日は、本読むとしたら通勤電車に乗ってる間だけなんだけど、朝はともかく帰りの電車に乗る頃は完全に目が疲れてるから、文庫本の活字はやっぱキビシイ。どんなに帰りが遅くてもネットは絶対やるクセに(笑)。
ちなみにあの有名な「オペラ座の怪人」の方は未読。
この短編集が自分にとっては初めてのガストン・ルルー作品。
もともとこの本を読もうと思った理由は『胸像達の晩餐』という作品に一番興味を持っていたから。
恐怖小説といっても、内容はさすがに古風というか露骨でショッキングな怖さではなかった(あ、でも苦手な人にはやっぱり向かないかも)。
中でも一番印象的だったのは、やっぱり『胸像達の晩餐』。
このタイトルの意味がわかると更に怖気が…。
頭の中で映像化してみる…ダメだ…ヤバい、おぞましすぎ。
(↑や、面白かったけどね)
次に怖かったのは『火の文字』。
なんか地味に怖いというか、読み終わった後でジワジワくる感じ。
あの「あるじ」は一生あの言葉につきまとわれるのか…。
『ヴァンサン=ヴァンサンぼうやのクリスマス』。
これは怖いというより、最後の最後で切なくなってしまった。
なんかここのところ猟奇ものばっかり読んでるような気が(笑)。