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ハロルド・ネベンザール「カフェ・ベルリン」 [*読書ノート(海外)]

【※この日記は別サイトで2009年1月21日にアップしたものを転記しています】

 

カフェ・ベルリン

カフェ・ベルリン

  • 作者: ハロルド ネベンザール
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 1999/03
  • メディア: 単行本

 

昨年12月25日から読み始め、1月17日読了。

 

著者や内容に対する前知識は全くなしで、たまたま図書館で目に止まった本。

カバーイラストに何となく惹かれたのと、あらすじ文に目を通して、ちょっと興味を引かれたので借りてみた。

 

第二次世界大戦中、ドイツがナチス政権下にあった頃、ユダヤ人でありながら自分の素性を隠し続け(スペイン人に成り済ましていた)、ベルリン有数のナイトクラブ・オーナーとしておさまったダニエル・サポルタ。

彼によって綴られた、1943年11月14日から1945年4月30日(ヒトラーが自殺した日)までの日記を元にして構成されたノンフィクション小説。

 

ふとしたきっかけと出会いからベルリンで店を買い取ることになり、あれよあれよという間にSSの高級将校達が集まる有名クラブとして繁盛するまでに至った。

成功物語に彩られた過去の回想、そして、ユダヤ人であることがばれてしまったために空襲下の屋根裏部屋に身を隠し、いつ発見されるかという極限状態の中で恐怖に怯えつつ日記を書き綴る現在の様子とを織り交ぜながら話は進んでいく。

 

恥ずかしながら、歴史的背景や社会情勢に対する元々の理解力や知識がとんでもなく乏しいため、当時の社会状況や歴史的/宗教的思想を語る部分については読み進めるのにかなり時間がかかってしまった(しかも全て理解出来てないと思う…)。

 

でも、クラブに集う踊り子達との性のこと、迫害されていた両性具有者を救い出したつもりが最終的には搾取するがのごとく利用し続けてしまったこと、秘密のスパイ行動への加担、自分の身を守るためとはいえ人を殺めてしまったこと、そして何よりも唯一愛した女性を傷つけ精神を破壊してしまったことへの後悔…など、夜の海の中を自由に泳ぎ、きらびやかな生活を送りながらも少しずつ堕ちていく主人公の心の葛藤部分にとても引き込まれた。

 

あと、注目のしどころがちょっとズレてるかもしれないけど、本編を読んでいて印象的だったのが、様々な料理や食材、食事についての描写。どのシーンも、それはそれはたまらなく美味しそうに書かれていてねぇ…。

主人公もそのことについて触れていたけど、やはり食事の時間(たとえジャガイモ1個のみであろうと)だけが、屋根裏部屋で過ごす暗く寂しい日々に唯一色合いを添えてくれる非常に重要なものだったから、日記の中にもかつての豊かな食生活に対する恋しさが自然と現れていたのかもしれない。


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