安部公房「水中都市・デンドロカカリヤ」 [*読書ノート(国内)]
初期短編11編を収録。
社会風刺を匂わす要素も織り交ぜつつ、非日常的で非現実的。
どの話もこの上なく不条理だけど、面白い。
これらが全部、昭和24〜27年の間に執筆されたというのもスゴイ。
今読んでも驚かされるのだから、当時はかなりブッ飛んでたろうなー。
『闖入者』は強烈だった。
〈民主主義〉を笠に着て、〈多数決〉という美名にかくれ、
個人の〈生〉を喰い破り、〈恐怖〉で支配する連中。
主人公の身に降りかかる、あまりにも理不尽な展開続きに
ムカつくやら底知れない不気味さを感じるやらで、
実に良い塩梅でイライラ&カッカさせてくれる(笑)。
ああ〜そういえばこの感じ・・・筒井康隆の短編集『懲戒の部屋』を読んだ時を思い出すぞ。
筒井氏の作風には、安部氏からの影響も含まれていたのかな…と想像。
『水中都市』も好き。
泥臭いのに、ファンタジーを感じる。
ラスト二行の
『しかしおれももう返事を待ってはいなかった。おれはその風景を理解することに熱中しはじめているのだった。
この悲しみは、おれだけにしか分らない……。』(P.250)
…がズンときた。