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カズオ・イシグロ「浮世の画家」 [*読書ノート(海外)]

浮世の画家 (ハヤカワepi文庫)

浮世の画家 (ハヤカワepi文庫)

  • 作者: カズオ イシグロ
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2006/11
  • メディア: 文庫

彼の作品を読むのは、『わたしを離さないで』に続き、これで2冊目。

戦時中、日本精神を鼓舞する作風で名をなした画家・小野
多くの弟子に囲まれ、大いに尊敬を集める地位にあったが、
終戦を迎えた途端、周囲の目は冷たくなった。

老人・小野が何を言っても、何をやっても、空回り。
実の娘たちや義理の息子は何かにつけ反論してくるわ、
かつての弟子からもそしりを受けるわで、
周囲の人間と噛み合うことがないまま、孤立無援となっていく…。

自らの過去を高尚げに語る小野だけど、
かつて犯した過ちを素直に認めているようでいて、その実、
核心部分(おそらく小野自身にとっては都合が悪いであろう真実)は曖昧なまんま。

独り善がりで、いまひとつスッキリしない独白。
しかも、とりとめないエピソードが頻繁に付け加えられ、その度に話が横に逸れまくるもんだから、
コノジイサン、ナンナノ???と違和感を抱きながら読み進めることになる。
『少なくともおれたちは信念に従って行動し、全力を尽くして事に当たった』のはわかるんだけどね…。

奇妙な読後感を誘う筆致は、カズオ・イシグロ節の成せるワザなんでしょうか?
読み手をモヤモヤ(時々イラッと)させるクセに、最後までぐいぐいと読んでしまったんだよなあ。
そして小野は、最後の最後で「あること」を悟り(悟らされ?)ます。

「こういう切り口もあるんだなあ」と、ある種の面白さを感じる小説でした。

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